水彩画の巨匠エゴン・シーレ

私は絵画鑑賞が趣味ですが、数ある画家の中でエゴン・シーレが最も好きです。エゴン・シーレは19世紀末にオーストリア・ハンガリー帝国に生ま

れた画家で、ウィーンを中心に活躍していた水彩画、自画像の巨匠です。

私がシーレの絵を好きになったきっかけは、中学三年生の頃に美術の教科書に載っていた「ホオズキの実のある自画像」を見て感動したことにあり

ます。私は当時は絵画に全く興味がなかったのですが、そのシーレの絵を見た瞬間に心を奪われました。あの時の思考が一瞬止まるような衝撃は20年以上経った今でも忘れません。シーレのあの不満そうで、そして反抗心が窺われるしかめ面、シーレの黒い服と橙色のホオズキとの対比。この何とも言えない自画像の表情に現れているシーレの心情を想像したことと、色彩があまりにもお洒落であることが、中学生の私をとりこにしました。

それから13年が経ち、私が28歳の頃に、大阪サントリーミュージアムでクリムト・シーレ展が開かれました。シーレと聞いて、中学生の頃にシーレの絵で感動したことを思い出し、そのクリムト・シーレ展を観に行きました。その展覧会では「ホオズキの実のある自画像」は展示されていませんでしたが、「黒い陶器のある自画像」「ギュータースローの肖像」などの秀逸な作品が多数展示されていました。これらの作品はその展覧会で初めて観たわけですが、どれも衝撃的で物凄く感動しました。こんなにエネルギッシュで、こんなに生々しく人物を描ける画家は他にいないと思いました。作品のひとつひとつが、中学三年生の頃に体験したあの衝撃を再現してくれたのでした。
その展覧会をきっかけに、私はシーレの画集を買い集めました。しかし、画集では満足できず、ついにはシーレの作品展示数が最も多いウィーンのレオポルト美術館へ行こうと思い立ちました。

私はその展覧会から2年後の冬に、オーストリアのウィーンへ行きました。フリーの3泊だけの旅でしたが、とにかくひたすらシーレの絵を観て回りました。レオポルト美術館、ベルヴェデーレ美術館、リンツのレントス美術館など。特にレオポルト美術館のシーレの展示は格別に素晴らしかったです。なぜなら、あの「ホオズキの実のある自画像」の実物を観ることができたわけですから。私はその実物を観たとき感動のあまり、ずっと立ち尽くすように見入っていました。シーレにはヴァリーという恋人がいて、シーレが投獄されたときに、ヴァリーはシーレに差し入れをして精神的に支えていました。その「ホオズキの実のある自画像」のすぐ隣に、ヴァリーの肖像画が展示されていました。これがまた一層私を感動させました。シーレとヴァリーは今でもベストカップルで、オーストリアの人々に見守られているのです。

私のエゴン・シーレに対する思いは色褪せることがなく、今年はシーレとヴァリーが暮らしていたチェコの町へと行ってきます。シーレのアトリエを訪れたり、シーレの絵画を鑑賞してくるのです。

近頃では絵画のレンタルサービスなどで、病院やレストランなでもさまざまな絵画を見かけることも増えてきました。