いつも通る道に大きな看板ができているのに気づきました。
『ホワイトニング◯◯円から』という文字がまず目に飛び込んできました。
近くの歯科医院のものでした。
白い歯を見せた笑顔の写真。
にっこり笑った歯の形のキャラクター。
歯には自信がなくなかなか大きく口を開けて笑うことのできない私は、羨ましい気持ち半分、なんだかやましいような後ろめたいような不可解な気持ち半分でしばらく立ち止まってそれを見てしまいました。
『ホワイトニング◯◯円から』
歯科でホワイトニングの施術をしてもらえることは知っていましたが、自費でとても高いイメージがありました。
ホワイトニングなんて女優さんやモデルさん、芸能人がするもの。
自分には関係ない。
そう思っていたので今までは気に留めたこともなかったのです。
でもそこには、そんなイメージとはかけ離れた値段が書かれていました。
「えー、ホワイトニングってこんなに安いんだ。」
歯医者さんといえば虫歯を治してもらうところ。
歯医者さんといえば痛いところ。
歯医者さんといえば怖いところ。
歯医者さんといえば…
と、私にとって歯科とはネガティヴでマイナスのイメージしかないところ。
思えば今まで、怖さや抵抗感がまさって行くのをできるだけ先延ばし先延ばしにして、結局我慢できないほど虫歯が痛み出してやっと門を叩くような、そんなところ。
それが歯科。
近ごろでは虫歯はなくても定期検診に通ったり、歯石をとってクリーニングしてもらったりする人も多いと聞きますが、虫歯でもないのに行くなんてとんでもない。
そう思っていました。
そんなだから私の歯は、必要最低限の治療しかしていないし、歯並びも良くないし、なんとなく黄ばんでいるし…話すときや笑うときはなんとなく口にてをやったりして、正直に言うとコンプレックスばかり。
本当は、白く輝く歯が理想。歯並びは良くなくてもせめてもっと白かったらなとは常に思っていたのです。
自分の気持ちは見ないふりをして。
気休め程度に歯が白くなると謳う歯磨き粉を使ってみたりして、「やっぱり気休めじゃん。」と諦めて。
自分には関係ないと思って気にも留めなかった…でも本当はすごく気になっていたのかもしれません。
値段もハードルも高いから、諦めて遠ざけていただけで。
虫歯じゃないけど、行ってみようかな。
にっこり笑った歯の形のキャラクターを見ていると、今なら歯科の門を叩くのも、そんなに困難なことではない気がしてきます。
思わずスマホを取り出し、看板の写真を撮ってきてしまいました。
「ホワイトニング◯◯円から」
私も、歯を見せてにっこり笑いたいな!
電話をかけてみようと思っています。